2006年 ゆとろぎ特別企画
おことわり
 作品展に向けて準備中でです。順次説明と作品を追加してゆきます。
能面

 昨年、『国民文化祭ふくい2005』の新作能面公募展でその技量を高く評価され、最高賞の「文部科学大臣奨励賞」を最年少で受賞しました。
本人コメント:
「国民文化祭ふくい2005能面コンテストの祭典」
 この面は、4年程前に制作を始めたものの未完成のまま暫く忘れかけていました。
 昨年の夏、この公募展の存在を知り何の面を応募するか検討していたところ彫りかけの万媚を思い出し出品しようと制作を再開しました。
 この万媚という面は、桃山時代に面打師の出目秀満と能役者の下間少進が、色気と妖気を必要とする役の為に創作したと伝わっています。
 能面は、室町期に多く創作され、江戸期から現代まで古典の写しを仕事の中心としてきました。
 今回の面は基本的に写しですが、目の表情や唇のうねり方、頬の膨らみ等で妖気を強調し、肌の白さや、眉の形、唇の色で品格を失わぬように心掛け、自分なりの工夫をしています。
 大きな骨格は決まったものですが、頬の肉一枚の差や部分の関係、肌色の濃さや艶具合、髪や唇の色などが響き合い、役の性格が無数に表現できると考えています。
 今後は能楽への理解を深め、舞台と一体となるような面を打つことが夢です。
 運良く賞を頂戴し、今後の励みとなりましたが、慢心せぬよう地道に続けていきます。
万媚(まんび) 平成17年作
新作能面公募展において
最高賞「文部科学大臣奨励賞」受賞
−翁系−
「翁(おきな)」は能の中でも特別に神聖視された演目。翁面は、昔、神が老人の姿で舞った(翁舞)姿をあらわし、翁面をご神体とした神社もあり、能面の中では最も発生が古いといわれている。
■翁面(おきなめん)
翁の面は昔から神曲として特別に扱われ、その内容は他のものとはまったく異なる。切り顎の作りや皺の彫り方などは、舞楽面と共通するものが多い。
白式尉(はくしきじょう)
 平成6年(11才のときの作品)
この白式尉は、長澤先生から初めて煤液を用いた古色を教えていただいた面です。先生が実際に手を入れてくださり、その光景は今でも鮮明に覚えています。これは小学生時代最後の面です。
−尉系−
神が仮の姿に身を変じてこの世に登場する老人の姿の時に使われる面。 尉面にも品格のある神性を表す面、庶民のたくましさを表す面などがある。
■小尉(こじょう)
脇能物の前シテに用いる。後場で神体になる品格のある老人で、表情がやわらかい。「高砂(たかさご)」「老松(おいまつ)」等。
−男性系−
王朝の物語に登場する男性の主人公や平家の公達に使われる。
■中将(ちゅうじょう)
 在原業平の顔を写したといわれる面で、眉間のしわと殿上眉に王朝貴族の憂愁が感じられる。「融(とおる)」「清経(きよつね)」等
中将(ちゅうじょう)
平成15年作
若男(わかおとこ)
平成10年作
三位の中将業平にちなんでつけられた名前といわれ、若い公達の姿を写したものです。
 これは、柔らかな彩色を求め始めた初期の面。若男の用途もこれに準じます。
−女性系−
喜怒哀楽の表情がはっきりせず、中間的な表情に作られた面。面を照らしたり(あおむける)曇らせたり(うつむける)することで喜びや悲しみの表情を出します。
■小面(こおもて)
 小とは可憐さや雅やかさなどの意味を持ち、若い女性を表現する代表的な能面です。 
 小面は最も多く打ち、失敗を重ねてきました。何よりも愛着を感じる面です。
小面(こおもて)
平成17年作
(観世九皐会蔵)
小面
平成17年作
小面
平成3年作
小面
平成5年作
万媚(まんび) 平成17年作 若女(わかおんな)
平成14年作
(梅若研能会蔵)

小面を基にして、そこに一段と艶麗さを加えた面。小面に比べ目や口の凹凸を強調し、華やかな印象を与えています。
これは品位の勝る万媚を求め打ちました。
観世座十一代の太夫左近重成が江戸初期の名工河内家重の命じて創らせたと伝わります。一般的に理性的で清楚な顔だちです。
■増女(ぞうおんな)
 増女と呼ぶのは、増阿弥が創作した若い女性の表情ということです。
 端正で、笑みを抑え、高い品位を感じさせる。小面に次いで好きな面で、制作数も多い。
増女(ぞうおんな)
平成17年作
増女
平成16年作
(中所宜夫氏蔵)
増女
平成11年作
節木増(ふしきぞう)
平成16年作
増女のうち、鼻のつけ根あたりに、節跡があることから付された名称。
玲瓏たる美しさを持ち、荒い横刷毛目が印象的な面。
 これは、端正さより艶麗さが勝っています。
−鬼神系−
一般に邪悪、悪霊、汚れ、邪心等を追い払う怒りの表情をしている。天狗や神の化身を表し、鬼神でありながら牙がないのが特徴。
泥牙飛出(でいきばとびで)
平成8年作
猿飛出(さるとびで)
平成8年作
小飛出的工作ですが、上下の歯列に二対の小さい牙が突き出ているところからの名称です。 猿の大飛出化した面です。とくに眼、鼻、口 などの道具立てが猿を思わせます。
大べし見(おおべしみ)
平成3年作
猿べし見(さるべしみ)
平成10年作
(梅若研能会蔵)
べじ見悪尉(べしみあくじょう)
平成17年作
能では天狗の面として用い、自負尊大な態度で人々を威嚇します。 猿の顔を小ベシ見的に表現した面です。口辺の彫りや、眼 も小さく丸く、いかにも猿らしい相貌がみられます。 年の功を経た天狗の大首領として表現した面です。コミカルな天狗のイメージより山の精霊のような大きさを求めましたが、課題を残しました。
黄不動(きふどう)
平成14年作
(清水康弘氏蔵)
獅子口(ししぐち)
平成10年作
不動明王の面になりますが、金泥で彩色されているので、黄不動と呼ばれます。髪の彫りは凝ったものですが舞台では全く見えません。
とにかく手間のかかった面です。渦巻いた髪や、彫り出した牙などには頭を抱え、本面通りに仕上げるだけで精一杯でした。
獅子の面です。ただし能における獅子は単なる猛獣としてで はなく、内容はあくまで妖精的な意味をもつ。
この獅子口は眉や髭が彫り出されている珍しい型です。
−怨霊系−
戦で無念の死を遂げた武将、殺生をして死後成仏できない亡者、嫉妬に狂う女性の表情など、目が金色に塗られ、怪しさがある。
■般若(はんにゃ)
一説に室町中末期の面打ち般若坊が創作したと伝わり、この名があります。怒りと悲しみを表現した鬼女の面で、白眼全体を覆った金輪は鬼神に近い強さ、恐ろしさ、恨みと怒りを表している。角のある面は他に生成(なまなり)、蛇(じゃ)等がある。「葵上(あおいのうえ)」「道成寺(どうじょうじ)」等
般若(はんにゃ)
平成18年作
蛇(じゃ)
平成17年作
真蛇(しんじゃ)
平成8年作
般若は怒りと悲しみと言う相反する感情表現を必要とし、穏やかな女面以上の難しさを感じることがあります。
「葵上」を念頭に、品格のある般若を目指しました。
怨霊の女面であった般若の嫉妬の表現をもう一つ極端にして、動物としての蛇体に化してしまったのが、蛇の面です。
泥眼(でいがん)
平成17年作
生霊や成仏し仏となった女性の役に用いられ、目と歯に金泥が塗られていることからそう呼ばれる。
 初めて打った泥眼で、優しすぎたかもしれません。

狂言面
賢徳(けんとく)
平成3年作
賢徳
平成2年作
動物の相を表す面、この面を掛け、それらしき縫いぐるみ身につければ、牛にも馬にもなる。
ウソ吹(うそふき)
平成2年作
武悪(ぶあく)
平成4年作
うそとは口をすぼめて吹く口笛のこと。この面で、植物、昆虫、魚類、亡霊になります。
 目の輪郭を氏春先生が描いてくださいました。
ユーモラスな表情を特徴とした鬼の面。能の鬼と異なり自由な発想が生かされた様々な面がある。

神楽面
姫猿(ひめざる)
平成17年作
(清水康弘氏蔵)
だるま
平成17年作
(清水康弘氏蔵)
天狐(てんこ)
平成16年作
(藤村明美氏蔵)
狂言面の猿を祭囃子ように彫りました。人波(にんば)や三番叟に用いる。 道化役に用いる。人波(にんば)という曲で楽しく踊る。 位の高い狐に用いる。屋台囃子という曲で、勇壮に踊る。

ミニ面、根付、木彫像
 菩薩像、無著像 氏春先生の勧めもあり、仏像の類を何体か彫りまし全身像の制作は、面の荒彫りに不可欠な造形感覚を養うために役立っている気がします。
 根付は小さな作品を精密に彫り上げた喜びが忘れられず、度々作ります。
ミニ獅子口
平成16年作
(清水康弘氏蔵)
大ベシ見根付
平成15年作
雷根付(いかずちねつけ)
平成15年作
タテ 5.4cm
(清水康弘氏蔵)
タテ 4.9cm タテ 5.2cm
白式尉根付(はくしきじょうねつけ)
平成11年作
菩薩像
平成10年作
無著像(むちゃくぞう)
平成18年作
タテ 3.1cm 像高 67.5cm 像高 60cm
新井達矢面を打つ
新井達矢作品集
面の織りなす幽玄の世界
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新井達矢 能面作品展
文部科学大臣奨励賞の受賞作品「万媚(まんび)」をはじめ、30点を展示します。
2006.10/3(火)〜15(日)  10:00〜17:00
●(最終日 16:00まで)
●展示室(ゆとろぎギャラリー) (入場無料)
※会場でアンケートにご回答いただいた方には、能楽舞台鑑賞会の料金を特別割引(200円引き)いたします。
ゆとろぎギャラリーで作品をご覧ください
写真では味わえない感動があるでしょう。